生産者 入木伸二さん
長く畜産業を営み、その後、農業に転向してこの地に。朗らかな語り口の端々から、土を愛し自然を愛する思いが伝わってくる。
宮崎県「霧島下ろし」にあらがう、大麦若葉の生命力
天孫降臨神話の舞台となった高千穂の峰。その姿を望む宮崎県内の生産地で、「青汁三昧」の原料となる大麦若葉が育っています。美しい緑色とほんのりした甘み、爽やかな香り。それはこの地の豊かな自然の恵みでした。今回は大麦若葉の契約農場のひとつ、宮崎県・高原町をご紹介します。
冷たい「霧島下ろし」と火山性の土壌がカギ
緑豊かな大麦が霧島下ろしに揺れる姿はまさに圧巻。
霧島連山を望む開けた大地に、ゆうゆうと広がる大麦畑。
「今年は暖冬で雨も多かったけど、良く育ったな…良い麦は見ただけで判るんですよ。きれいな緑色をしてるでしょう?」
濃いグリーンにおおわれた畑を見回し、入木さんは満足そうに語ります。
暖かい陽差しの中でも風は冷たく、キュッと身のすくむ思いがします。
これが霧島連山から吹き下りてくる「霧島下ろし」。肌にしみ通るようなこの冷たい風は、大きな寒暖差とともに大麦のたくましい成長を助け、深い味わいに育て上げてくれるのです。この霧島下ろしとともに良質な大麦若葉に欠かせないのが、この地域特有の火山性の土壌。
大麦は分けつ力(株分かれする性質)が強く、広く根を張りながらどんどん株を増やしていきます。黒土の中で白い粒のように見えるのがボラ土。土壌の水はけを左右する大きな要素です。
「ただの黒土ではないんです。ほら、見てごらんなさい」そう言いながら、入木さんは畑の土をスコップで掘り起こしてみせました。すると黒土の中に小石が数多く混ざり込んでいます。これは「ボラ石」という多孔質の石。これが適度に含まれた土は水はけが良いため、水をたっぷり与えても根腐れの心配が少なく、大麦がのびのびと元気に育つことができるのです。
広大な農場を徹底管理。土作りから始めるこだわり
この土地の土壌菌を混ぜ込み、数ヶ月かけて堆肥が作られる。
「ここでは、環境保全も土作りも一から自分たちの手で質にこだわり、納得できるまで試します。当然、肥料も同様。化学肥料は一切使わず、すべてを堆肥でまかないます。「基本は牛糞。そこに鶏糞をわずかに混ぜ込む。牛糞は長くじっくり効いていくし、鶏糞は効きが強く、しかも早い。」
試行錯誤を繰り返して見つけた配合で牛糞と鶏糞を混ぜ込み、堆肥場に積み上げておくと、やがて微生物による発酵が始まります。同時に発熱し始め、70〜80度ほどにまで温度が上がります。この発熱によって病原菌や害虫の卵、雑草の種などの影響を減らし、安全で質の良い堆肥にすることができるのですが、この農場で特徴的なのは、この発酵段階で地元に根付いている土壌菌を使うこと。
「この土地の土壌菌を培養して混ぜ込むと、この土地に合った堆肥ができるんですよ」
ほとんどの土地では土の中に「土壌菌」が住んでいます。その種類はさまざまなのですが、最終的にはその地域の土壌の性質や気候風土に合った菌だけが生き残ります。
つまり土壌菌というのは、その土地で最も強く、しかも気候風土に適応した菌だということになります。畑の土作りにはまさにぴったりです。
麦はもともと強い作物だといわれますが、この堆肥のためか「雑菌に強く、しかも病気の心配もない、強い麦ができる」と入木さんは胸を張ります。
収穫してすぐ、敷地内で加工。特殊な工程を踏むことで、大麦若葉ならではの色と甘みが際立ちます。
大麦は種まきから一週間程度で発芽します。
新芽が伸びてきたところで「麦踏み」をすると、なおいっそう力強く成長しようとします。ひと粒の種からいくつも株分かれし、2か月足らずで30センチほどまでに育ちます。このたくましさ、成長の早さのため、ひと冬の間に2回は収穫できるといいます。
霧島下ろしと黒土の大地、きれいな水とこだわり農法。厳しくもやさしい自然環境と人の工夫が、元気な大麦若葉を育てるのです。
宮崎県高原町とは?
大きな寒暖差と清らかな水が甘みと旨みをギュッと閉じ込める
温暖な気候で知られる九州・宮崎県。ですがこの地域は一日の寒暖差が大きく、朝晩は急速に冷え込みます。実はこれが甘みと旨みの詰まった大麦若葉には欠かせません。さらに霧島山系から湧き出る清らかな水が、その健やかな成長を支えてくれるのです。
入木さんが土から育てた大麦若葉が使われている青汁三昧。作り手のこだわりがつまった野菜の青汁を、ぜひお試しください。